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2011年3月23日水曜日

変わる心配蘇生法→人工呼吸せず心臓マッサージだけ

2011/3/22の共同通信記事より
家族や友だち、見知らぬ人が突然倒れて意識も呼吸もない場合、口から息を吹き込む人工呼吸と胸を圧迫する心臓マッサージを繰り返す従来の心肺蘇生法が変わりつつある。日本を始め世界的に、心臓マッサージだけの有効性が相次いで報告されているからだ。研究者でつくる日本循環器学会や自動体外式除細動器(AED)の普及を推進している日本心臓財団は、人工呼吸なしの簡単な方法を推奨している。 駿河台日大病院の長尾建循環器科部長によると、病院外で心臓が突然停止した場合、救急隊が駆けつけるまでは市民による速やかな心肺蘇生が重要だが、およそ3分の2の症例では行われていない。人工呼吸を伴うやり方の複雑さや、口と口とを接触させることに対する抵抗感が大きな要因という。


●外国でも調査 昨年までの心肺蘇生に関する国際ガイドラインや日本の指針では、気道を確保した後、2回の人工呼吸と30回の心臓マッサージを繰り返す方法が標準とされており、講習会などでこの方法で教わった人も多いだろう。 ところが、長尾部長らが関東地方の病院外で心停止して市民に救命処置を施された成人千人余りの症例を分析したところ、30日後の社会復帰率は、心臓マッサージのみが6%、人工呼吸も併用した場合は4%と、心臓マッサージだけのほうがむしろ良好だった。大阪での調査では両方とも4%で同じ結果だった。 そのほか、ベルギーや米国、オランダ、スウェーデンなどでの調査でも、心臓マッサージだけのほうが良好か、ほぼ同じとの結果が得られた。●「普及の鍵」 こうした調査に基づき、米心臓協会や日本蘇生協議会などが参加する2010年版の国際ガイドラインでは「まず心臓マッサージ。その後に可能であれば気道確保、人工呼吸」と変更された。「人工呼吸ができない、あるいはしたくない人は心臓マッサージだけでよい」と強調されている。 心臓マッサージだけでよい理由について、長尾部長は「胸を圧迫して緩めたときに少しは換気される。人工呼吸に気を取られて十分な心臓マッサージができない方がよくない」と説明する。 大阪での調査を実施した京都大保健管理センターの石見拓助教は「倒れてからできるだけ早く胸を圧迫してほしい。いざという極限状況の中で、できることをやってもらいたい」と話す。「単純な心肺蘇生法が普及の鍵だ」として、人工呼吸が不要で胸を強く押すだけの簡単な訓練機器「あっぱくん」を開発、学校などで講習を行っている。●強く速く 石見助教によると、窒息など、心臓以外が原因の子どもの心停止については人工呼吸が有効とのデータがあり、世界中で議論が行われている。しかし、子どもも含め、何もしないよりは心臓マッサージだけでもした方が救命率が高いことは専門家の間で共通認識になっているという。 推奨される心肺蘇生法は、(1)人が倒れて反応がなく、呼吸に異常があれば、119番通報とAEDの取り寄せを近くの人に頼む(2)両乳首の間の胸の平たい骨(胸骨)に手のひらを重ねて置き、強く速く押し続ける(3)AEDが届いたら電極パッドを胸にはり、音声の指示に従う、というものだ。 心臓マッサージは、1分間に100回以上、胸が5センチ以上へこむ強さが目安で、実際にやってみると意外に難しい。講習会などで体験しておくことが大切だ。